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18歳以上推奨シチュエーションドラマCV/九財翼、彩和矢

シナリオ/雪華

イラスト/ロクスケ

​2020年11月23日​発売

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Story

「真面目だけが取り柄の平凡な女子学生」だと自負しているヒロインには、

早く帰宅しなければいけない理由があった。
けれど、いつもより遅い時間に焦って公園を横切ろうとした、その最中
――
突如として現れた二人の男に呼び止められる。
捕まったヒロインは、そのまま近くの公衆トイレに押しこまれ、凌辱の限りを尽くされてしまう。

「やっぱ強〇って最高だよなぁ」
「じゃあ、この公衆便所でママになっちゃおうか」

辱めに耐えたヒロインだったが、不運にも気に入られてしまい、

彼らのマンションへと連れていかれる。

そうして悪魔のような男たちとの、奇妙な共同生活が始まったのだった……。

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Character
虎徹.jpg

【虎徹(こてつ)】CV九財翼

ヤ○ザの元組長の息子の一人。双子の弟。
狂犬と呼ばれる頭のネジが飛んだ男……と言われているが、実際は意外と冷静に物事を見ている。


生まれつき嗅覚がない。

​マンションに連れ帰ったヒロインに執着していく。

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【龍治(りゅうじ)】CV彩和矢

ヤ○ザの元組長の息子の一人。双子の兄。
物腰柔らかで優しそう……に見せかけた外道。


生まれつき味覚がない。

ある契約を結んでからは、

​ヒロインを特別扱いして甘やかす。

【ヒロイン】

真面目な性格で、どこにでもいそうな平凡な女子学生。

​まだ幼い弟が二人いる。

​どうしても帰らなければいけない理由があった。

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Tracks

Track01.『公園の公衆トイレで……』

※強姦、3P、イラマチオ、二本挿し、中出し

Track02.『虎徹の味』

※強制、くんに、中出し

Track03.『龍治のにおい』

※強制、シックスナイン、中出し

Track04.『悪魔のささやき』

 

Track05.『望んで堕ちる』

※3P、二輪挿し、中出し

Track06.『Whereabouts Of Sin』

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Sample

​クロスフェードサンプル

クロスフェードサンプル九財翼、彩和矢
00:00 / 11:58

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DL

2020年11月23日 DL販売開始

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​Special

【DL達成記念】

★500DL達成で/後日談ドラマ1(虎徹編) 追加同梱​済み

★1000DL達成で/後日談ドラマ2(龍治編) 追加同梱​済み

 

★1500DL達成で/描きおろし壁紙配信予定 追加同梱済み

【キャストコメント】

虎徹役 九財翼様

Q1・演じられたキャラについてのご感想をお教えください。

 

虎徹は第一印象では、ヒロインを脅し、無理やりさせたり、監禁に近い共同生活を送るので、

ただの最低な人間なんだと思っていたのですが、 

話が進むにつれ人間性が見えてくると、ちゃんと感謝もする一本筋が通ったところがあったり、

真面目に話を聞いて悟す大人な部分、

逆に、思ったことがすぐ声に出ちゃうような子供な部分があったりと、

やってることがやってることなので善人とは言い難いですが、

第一印象とは違う奥行きがある男なんだなと思いました。

  

Q2・興味深かった点があればお教えください。

 

虎徹も龍治も、ヒロインちゃんも、お互い関わることで全員心情の変化があり、

そこが物語に惹きこまれる面白さになっていると思います。

欠けている部分を補う関係は、この三人じゃないといけないという絆が生まれて、

兄弟はあくまで善人ではないのですが、とてもあったかい不思議な、

ある種歪な関係性になっていくのがグッときました。

 

シーンで言うと、虎徹と龍治がヒロインちゃんを挟んで、

仲睦まじく喧嘩をするのが個人的には微笑ましくて可愛くて好きでした(笑)

 

Q3・この後、三人は幸せになれると思いますか。

 

何かがあってもそれを何とかする力と突っ切った心意気があるので、

何とかなるんじゃないかなと思います。

はたから見れば、歪んでいるかもしれませんが、

本人達が幸せだと思っているならば、それが一番だと思います。

 

職業柄、何があってもおかしくないですが、

それがまた絆が深まるいいスパイスになると思うので、

イケるとこまで突っ走ってって欲しいです。

 

Q4・ユーザーの皆様にメッセージをお願いいたします。

 

お聴き頂きありがとうございます!

『~whereabouts of sin~』という意味深な副題通り、

罪の行方は、三人の顛末はどうなるのか、楽しんで頂けたら嬉しいです。

 

虎徹を演じさせて頂きましたが、是非とも兄弟共々で愛して頂ければ、

虎徹も龍治も喜ぶと思います。

 

ぜひぜひよろしくお願いいたします!

龍治役 彩和矢様

Q1・演じられたキャラについてのご感想をお教えください。

 

初めて台本を読ませていただいたときに、え?ダメだよそんなことしたら!と

素でツッコミを入れておりました。
本当に衝撃のTrack01だったのですが、

物語が進み、龍治の生い立ちや気持ちの変化が見えてくるにつれて、

なんて不器用な人間なんだと。
後悔や恨み、たくさんのものを背負いながらも、

なんとか前に進んでいく姿に胸が熱くなりました。

  

Q2・興味深かった点があればお教えください。

 

大切な人との出会いは人間をこうも変えられるのかと思わずにはいられませんでした。
龍治はヒロインと出会ったことで、

たくさん悩み、生まれて初めてのことをたくさん経験していました。
僕も本当に人との縁を大切に生きていこうと思いました。
そして「過去を悔やむのは時間の無駄だ」という龍治のスタンス。
うん、僕も前を向いてどんどん進んでいきたいと思います!

Q3・この後、三人は幸せになれると思いますか。

 

なれると信じています。
いや絶対なれる。
なってもらわないと!
幸せの形は人それぞれで本当にたくさんの形があると思っています。
この後、後悔したり、落ち込んだり、激怒してぶつかったりすることもあるでしょう。
それでも幸せを決めるのは3人であるはずですから。
過去を悔やむのは時間の無駄じゃん? そういって周りを気にせず3人の幸せへと突き進んでいってもらいたいです。

Q4・ユーザーの皆様にメッセージをお願いいたします。

 

龍治を演じさせていただきました、彩和矢です!
今回の龍治という役は僕の中で「挑戦」という気持ちが強かったです。
彼からとてもたくさんの刺激をもらいました。
彼の気持ちの変化や心の中の声など皆様に感じていただけると本当に嬉しいです。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。
虎徹と龍治の危ない魅力が詰まった物語にぜひドキドキしてくださいね!
ぜひよろしくお願いいたします!

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​SS

【発売前SS】

 

虎徹視点SS

『俺たちの姫さん』 著・雪華

 俺は何にでも名前をつけるのが好きだ。だって名前がないと呼びにくいだろ? 「おい」とか「なあ」で振り向かなかったら、イラついてぶん殴りたくなるじゃねぇか。……まあ、今俺の隣でレーシングゲームをやってる女は、別なんだが。

「あ、追いついたよ」
「ちげぇ。とろいお前のために待っててやったんだよ」

 コントローラーを握りながら横を盗み見ると、俺の視線にまったく気づいてない様子でテレビ画面をガン見してる。『ある契約』で俺たちに囲われてるくせに、たまに「状況忘れてんじゃねぇか?」と思うくらい肝が据わってるというか……のんきな女なんだ。
 ほんと、しくじった。
 初日にレ〇プした時は生まれたての小鹿みてぇにブルブル震えてっから「小鹿」なんて名前つけてやったのに。
 ああ、今からでも命名し直したい。というかそれ以前に、そろそろ本名で呼ばせてほしいんだが。
 なんてモヤモヤと考えてたら、いつの間にかゴールしてやがった。

「やった! 初めて勝った!」

 よっぽど嬉しかったのか、手を叩いて笑ってる。パァッて光が広がるみてぇな笑顔だ。でも数秒後には俺の視線に気づいたのか、テンションがあがった自分を恥ずかしがるみてぇに黒目を泳がせて、しまいには真っ赤になって唇をキュッと噛んだ。
 ……なんだ、この可愛い生き物。ふざけんな、心臓止まるじゃねぇか。キュンじゃなくてギュンときたわ。

「っ……!」

 胸を押さえて、しょうもない衝動をこらえる。
 そうしたら外野の龍治が割って入ってきやがった。

「なに今の笑顔、可愛すぎるんだけど! もう一回やって、もう一回!」
「や、やだよ。それに笑ってないし」

 ますます真っ赤になるところが、いい。すげぇ、いい。
 ……なんて、俺も変わったもんだ。少し前までは、女の顔色なんてどうでもよかったっつーのに。
 激変しちまった自分自身に苦笑しながら、細っこい手首を引っ張って、柔らかい体を腕の中に閉じこめた。

「龍治、テメェは引っこんでろ。コイツの笑顔を引きだしたのは俺だろ」
「ケツの穴が小さいこと言わないでよ、虎徹」
「そんなにケツ穴が気になるんだったら、今夜も龍治はケツマ〇コ担当だな」

「はあ? 昨日は交代にしようって言ってたじゃん」

 今日も今日とてマ〇コとケツマ〇コの激しいとりあいが始まる。
 どっちがいいか腕の中に判断を求めたら、耳まで赤くして「そういう答えを委ねないでください」と返してきやがった。
 ちくしょう。可愛いの特盛か。
 我慢できなくなって、ツンと尖らせてる唇に喰らいついた。
 小さな呻き声が口内に響いて、腰にくる。

「あっ、まだ前と後ろどっちか決めてないのに! ずるいよ、虎徹!」
「うっせぇ。今日のルールは早いもの勝ちだ」

 龍治のぶつぶつとした文句はオールスルー。早速抱きあげてベッドに向かう。
 ふと視線を下ろすと、なんとなく複雑そうな表情をした顔があった。

「なんだ、今さら嫌だとか言うのか?」
「えっと……そんなに毎日両方に入れてたら、私のア、アソコが、ゆるゆるになっちゃうんじゃないかと……。そうしたら、私がここにいる理由、あるのかな……」

「はあ? なに馬鹿なこと言ってんだよ。お前の価値は――」

 マ〇コだけじゃねぇだろ。そう言おうとした自分に驚いた。
 ――そうか、俺。いつの間にかコイツの存在自体が必要になってたんだな。
 気づいたら、なんか妙に顔が熱くなってきた。
 ああ、もう、なんてザマだ。「欠陥品」のクズのくせして、なに照れてんだ、俺。まるで人間サマじゃねぇか。

「あーあ、最悪」

 まったく俺は、なんつー女を拾っちまったんだ。
 苦い気持ちで口角をあげたら、下から「ごめんなさい」とか言われた。
 
「お前のことじゃねぇよ」

 けど、説明すんのはやめた。
 俺にだって上手く説明できない気持ちだ。今言ったら中途半端になる。
 という気持ちを全部ひっくるめて、柔い首筋で囁いた。

「いちいち説明してらんねぇから、マ〇コで察しろ」
「む、無理だよ」
「がんばれ。気合いだ、気合い」

 理不尽、とぼやく口を吸いあげる。
 観念したらしい目を間近で見ながら、喉奥で笑った。

 今日も俺たちの姫さんは、最高に可愛い。

​<了>

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【発売前SS】

 

龍治視点SS

『大好き』 著・雪華

 早熟な子なんかは、幼稚園の頃から「〇〇くんのお嫁さんになりたい」とか言うじゃん?
 でも俺は、そういうもんかーと聞き流しながら、随分と冷めた目で周りを眺めてた。
 我ながら可愛くないガキだったと思う。でも出自がアレだから、まあそこは大目に見てほしい。

 というわけで、俺は今めちゃくちゃ困ってる。口説き方がわからないんだ。今までは顔面の良さでどうにかなったけど、今回ばかりはそうもいかない。だって、出会いがレ〇プだから。
 普通に考えたら、すげぇ詰んでる。まともに好かれるわけがない。よって、毎日地味に焦ってる。


 まあ、顔には出さないけどね。
 あー、最初が普通のナンパだったらなー。


 と思う時もあるけど、過去を悔やむのは時間の無駄だ。過ぎたことで悩むなら、そのエネルギーを別のことに有効活用したほうが数万倍いい。というのが俺の持論。
 そう例えば、今腕の中でうつらうつらしてる子を全力で甘やかすとか。

「くしゅっ」
「寒いんでしょ。だからこの毛布かけてって言ったのに。小鹿ちゃんは意地っ張りだなぁ」

 俺の胸に背を預けて映画を見ている小鹿ちゃん――虎徹命名――は、すんと鼻を鳴らして体を丸めた。そうすると、ますます俺の腕の中にすっぽりおさまる。
 可愛い。なんかもう映画とかどうでもよくなる。

「だって、ぬくぬくしてたら眠くなりそうだったから……」

 え? ぬくぬくとかヤバい擬音語使っちゃう?
 ちょっと、この擬音が持つ印象を小一時間考えたい。
 なんていうか、この響きには安心感が感じられる。あと柔らかさとか、可愛さとか、可愛さとか、可愛さとか……とにかく可愛いすぎない?

 例の契約があって多少安心してるとはいえ、自分を強姦した男の腕の中で眠気と格闘するなんて、無防備にもほどがあるでしょ。

「ああ、小鹿ちゃんの将来が心配。きっと俺みたいな極悪人に、また捕まっちゃうんだ」
「さすがに今回で学習したよ」
「本当かなー」
「うん。というか呼び方、そろそろ違う名前がいい……な」
「本名がいいの?」
「本名は……」

 小鹿ちゃんは本名が嫌いだ。もごもごと気まずそうに口を動かしてるのを見ると、かわいそうだなって思う。かわいそうなんて、女相手に思ったことなかったのにね。
 まったく人間って、こうも変わるもんなんだなって、自分のことながら感心するよ。


 俺は自嘲の笑いを隠して、ちょうどいい位置にあったつむじにキスしながら言った。

「もうわかってると思うけどさ。虎徹が小鹿って言ったら、たとえばクマみたいな女の子でも小鹿なんだよ。もやし野郎でも豚要素があれば豚だし」
「ネーミングセンスずれてるよ」
「でも俺、小鹿ちゃんって呼び方、似合ってると思うよ」
「私、そう呼ばれるほど幼くないし、体格だってそんな極端に小柄ってほどじゃ……」
「んー、体格じゃなくて、ここの中」

 とん、と柔らかな胸の中央を指先で押す。
 目をパチパチさせる仕草がまた可愛くて、思わず瞼にキスをした。

「産まれたばっかの小鹿ってさ、ガクガクしながらも、生きるために懸命に立ち上がろうとするじゃん。でも、もしかしたら立ちあがって歩いていった先には、肉食獣がいるかもしれない。そのままじっとしていたほうが、数秒だけだとしても長生きできるかも」
「うん……、かもね」
「だけど、立ち上がる。それは鹿の本能なんだろうけど、あれって人間に置き換えたら、すごく勇気とガッツが必要だと思うんだー。小鹿ちゃんは、そういう力があると思う。弱いのに、とっても強い子」
「そうかな……」
「そうだよ。虎徹が言った通り、最初は産まれたての小鹿みたいにガクガクしてたけど、大切なものを守るために今は踏ん張ってるじゃん。まさしく小鹿の強さだなって、毎日感心してるんだよ」
「ん……じゃあ、もう少しこの名前でいる」
「ふふ、そっか」

 本当は本名で呼びたい。だけどそう言ったら小鹿ちゃんが縮こまっちゃうから、希望は飲みこんでおいた。
 なんだか無性に切なくなって、ぎゅっと後ろから抱きしめる。
 このまま永遠に、俺の腕の中に閉じこめておけたらいいのにな……。
 とか言いそうになっちゃうから、もう一つの気持ちを耳元で囁いた。

「大好きだよ、小鹿ちゃん」
「も、もう。今日で三回目だよ。どうせ、どの子にも言ってるんでしょ」
「まさか。小鹿ちゃん以外の女の子に好きだなんて言ったこと、一度もないよ」

 チンコ突っこむ穴があればいいと思ってたんだから。――とは言わないでおこう。
 見つめながら微笑むと、目の前のほっぺたがふわりと赤く染まった。


 あ、照れてる。俺なんかの言葉で、照れちゃってる。
 あーあー、今すぐ突っこんで、ぐちゃぐちゃにして、アンアン言わせたいこの気持ちを、どうしてくれよう。
 実行するには、さっきヤリすぎちゃったしなぁ。

 やっぱもう少しだけ時間置かないと、小鹿ちゃんの体力的にダメだよねぇ。

 うーん、せめて二回までにしておくべきだったよ。


 なんて、珍しく過去の自分の行いを悔やんだ。とりあえず気持ちを落ちつかせるために、耳をはむはむと柔く噛む。

「ん。それ、よくやるよね」
「うん。錯覚の甘さを感じるんだ」

 こういうと、お人好しの小鹿ちゃんは抵抗しなくなる。俺の境遇を、哀れんでいるからだ。

 ほーんと、わかりやすい。
 俺は心中でほくそ笑みながら、柔らかな耳と首筋を堪能する。
 そうやって夢中になっていたら、いつの間にやら映画はクライマックスにさしかかっていた。

「さてと」
「あ、そろそろご飯にする?」

「うん」

 俺はニッコリ笑う。そう、食事の時間だ。
 哀れで無垢な『小鹿』が貪られるのは、映画が終わった、その時だから。

​<了>

 

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【1700DL記念SS】

※エンド後のネタバレがあります。未試聴の方はご注意ください。

龍治視点SS

『最高の美酒』 著・雪華

 それは買ったばっかの――小鹿ちゃんチョイスの――ふかふかなソファーに座って、三人で映画を見ている時だった。
 小鹿ちゃんを挟んで反対側に座ってる虎徹が、ほぼ空になった瓶をプラプラとさせて言った。


「なー、浅見に追加の酒買ってこさせようぜー」


 虎徹の顔は、結構な量を飲んだはずなのに素面そのものだった。


 ちなみに浅見っていうのは俺たちにつけられた護衛。こんなザルに度々買いに行かされるんだからアイツも不憫だよね。あ、不憫って言葉、最近小鹿ちゃんがよく言ってるから耳に残ってるだけなんだけどさ。


「それ以上飲んだら体に毒だよ」


 小鹿ちゃんが、やんわりと、でも有無を言わせない強さで虎徹から瓶を奪いとる。自分の弟たちを叱る時みたいな「め」という顔をしていた。


「あ? お前のその顔のほうが毒だよ。チンコにギュンギュンくる誘い顔しやがって」
「そっ、そんなのしてな――、んっ」


 小鹿ちゃんにかかったら「狂犬」なんて呼ばれてる虎徹はただの狼……いやもう、お腹を見せてキュンキュンいってる犬だよね。他の女には間違っても向けない甘い笑みを見せて、不意をつくみたいに小鹿ちゃんの唇を奪う。しかも一度じゃなくて、何度も。
 ちゅ、ちゅ、といつまでもやってるもんだから、映画の中の台詞がますます白けて聞こえる。
 いい加減我慢できなくなって、持ってたポップコーンを奥歯で砕きながら言ってやった。


「ちょっとー。真面目に見ないなら三人でセックスしたほうがいいんじゃないー?」


 元々俺はこの映画に興味はなかった。ただ小鹿ちゃんが観たいって言うから、チン毛の先ほども興味ない恋愛ものでも我慢してるだけ。横で二人がイチャついてるなら、俺だってそっちのほうがいい。
 そうと決めたら早速セックスになだれこもうか――と体の向きを変えようとしたら、虎徹がいらないガッツを見せた。


「ちゃんと見てるっつーの。これ、小鹿がずっと待ってたやつだもんな」


 えー、なんでそこで真面目ぶっちゃうかなぁ。俺だってチューしたいんですけどー? でも小鹿ちゃんのために耐えてるんだよー?

 

 ――とか、文句を飲みこむ。やばい、俺ってば最近大人じゃん?


 なんて自分で自分を褒めた。わざと大げさにポップコーンを噛み砕いて、舌打ちをごまかす。
 画面の中では、主演の二人がますます少女漫画チックな盛りあがりを見せていた。


 ところでこの映画、無人島設定なんだよね。でも画面の端に人工物がチラチラ入るのが、俺はすげぇ気になる。
 たぶん虎徹も一緒。その証拠にさっきから欠伸してるし。
 それでも感情豊かな小鹿ちゃんは、クッションをぎゅっと抱きしめて物語に没頭してる。

 あー、そのクッション羨ましいわー。場所代わってくんないかなー。というか小鹿ちゃんが俺をクッション扱いしてくれれば良くない?


 映画そっちのけでそんなことを考えてたら、虎徹がいつの間にか新しい酒を入れたグラスを傾けて笑った。


「ははっ、この映画作ったやつ正気じゃねぇな。首の汗が甘いわけねぇだろ。だってコイツら二日間も風呂入ってねぇ設定なんだぞ? ぜってー『うわ、しょぺぇ』って思っただろ」


 男が女の首筋を舐めて「甘い……」なんて歯が浮くようなセリフを言ってたから、虎徹はそれがツボにはまったらしい。くつくつと笑い続けてる。……と思ったら、急に真面目な顔になって呟いた。


「あ、でも惚れた女の汗だもんな。甘く感じるっていうのは、あながち間違ってねぇかも。しょっぱくても、なんかうめぇって感じるんだよな。なあ、龍治?」


 問いかけられて、俺はつまんでいたポップコーンをポロっと落とした。


 マジびっくり。
 虎徹は俺に味覚がないことを意図的に揶揄うことはあっても、それはお互いが承知した時だけなんだ。こんな形で『欠落』を意識させられたことなんか一度もなかった。


 小鹿ちゃんに気づかれないように、俺はサイレントで「マジ?」って視線を虎徹に向ける。
 途端、虎徹がハッとした表情になった。


 この顔は、マジだ。マジで無意識だった顔だよ。
 たぶん三人で同じテーブルを囲むようになったから、感覚の全てを共有できてるような錯覚に陥ったんだろうなぁ、と想像はついた。


 うん、わかるよ、俺も最近はそんな錯覚を起こすからね。
 でもさ、わかっててもさ……ムカつくもんはムカつくんだよ。これ虎徹じゃなかったら三回くらい刺してるからね。


 他のことならともかく、小鹿ちゃんに関することで「お前には知りようがないことがあるんだぞ」って言われるのは、耐えられない。味覚がないのを悔しいと思ったのは、あの小さい頃に虎徹と一緒に毒殺されかけた時以来だ。


 俺だって小鹿ちゃんがどんな味なのか、泣くほど知りたいよ。


「……悪い、龍治」


 身を乗りだして夢中になってる小鹿ちゃんを邪魔しないように、虎徹がぼそりと謝ってくる。
 その顔があんまりにも苦しそうで、100%後悔って頬に書いてあったから、俺は怒るに怒れなくなった。
 それに俺も小鹿ちゃんの邪魔はしたくない。だからニッコリ笑って小声で許した。


「全然気にしてない」


 ――っていうのは、もちろん嘘。ほんとは、めちゃくちゃ引きずってる。


 時間が経つほどに言われた時の衝撃がリフレインして、苛立ちが山になっていく。

 ほんと、他の男が相手なら引っこ抜いた舌をケツの穴に突っこむくらいキレてたと思う。
 虎徹のことは大好きだから、やらないけどさ。


 あーでもでも、イライラすんなぁ。今なら誰か殺せそう。
 そんな殺意を紛らわせるために、小鹿ちゃんの髪に鼻先を埋めた。

虎徹視点SS

「――あれ? 小鹿ちゃん、なんで俺のトリートメント使ったの?」


 それは三人で並んでクソほどつまんねぇ恋愛映画を見てた時だった。
 小鹿の髪に鼻先をうずめてた龍治が、唐突に聞いた。


「あっ、ごめんなさい! 今朝私のが切れちゃってたから、ひとまず借りて、後で謝ろうと思ってたんだけど……色々あって忘れちゃってたの」
「ああ、今朝か。そういえば小鹿ちゃんがお風呂からあがった後、すぐに俺が襲ったんだよね。はは、あれじゃあ忘れても仕方ないよ。小鹿ちゃん、いっぱいイッてビクンビクンしてたもんねぇ。頭の中、真っ白になっちゃったんでしょ?」
「う、うん。ごめん」

「だからー、俺のせいなんだから謝らなくていいって。……ふふ。耳がお風呂あがりみたいに真っ赤になっちゃって、かーわいい。あの時みたいに食べちゃいたい……」


 龍治が小鹿の耳をチュパチュパ舐めてる音が、横から聞こえてくる。


 まあ、イチャつかれる状況には慣れてるからいいけどよ。これじゃあ一人で恋愛映画鑑賞っていう苦行に耐えてるみたいじゃねぇか。龍治がその気なら、俺だって反対側の耳舐めたいっつーの。


 ――ただでさえ、そんなモヤッとした心境だったのに、龍治が爆番発言を投下しやがった。


「小鹿ちゃんと同じ匂いをまとってるって思うと、すっごい興奮するー。まあ一番興奮するのは、小鹿ちゃんの中の匂いなんだけどね」


 なんだそれ。さっきの仕返しか? 俺が嗅覚ないのわかってて、同じトリートメントの匂いだの、小鹿の中の匂いだの、ふざけたこと言ってんのか?


 瞬間的にわきあがった嫉妬心で腕に力が入る。


「っ……」


 俺たちが五感について語るのは、互いに『言ってもいい雰囲気』だとわかってる時だけだ。なのに今、龍治はそのルールをぶった切ってきた。
 思わず「あ?」って低い声で言いそうになった寸前で、龍治の目が何かに気づいたみたいに瞠られた。
 気まずそうに俺を流し見た目が「ごめん」って言ってくる。やめろよ馬鹿って返したくなるくらい泣きそうな目だ。
 それを見たら、口を閉ざすしかなくなった。

 言ってもいいタイミングと一緒で――俺ら二人の間では、他にも暗黙の了解みたいなもんがあるんだ。「お互いが心から謝ったら仲直り」っていう、ガキの頃からの習慣っていうか……二人で生き延びるために身につけた折りあいのつけ方なんだろうな。
 だから今も、俺は怒れない。龍治が真剣に申し訳なく思ってるからだ。
 言われてもいない謝罪がわかるのかって他の野郎は不思議に思うかもしんねぇけど、俺にはわかる。
 腹の中からの付きあいだ。本音かどうかの違いくらい、一瞬で判別できる。

 きっと近頃は一緒の食卓を囲んで食ってるから、全部の感覚を共有できてるような気になっちまったんだろ?
 さっきの俺もそうだったから、その気持ちはすげぇ理解できる。
 ……できるんだけどよ、やっぱイラッとする。


 秒針が進むごとにイライラが膨れあがって、俺は無意識に小鹿の腰をぐいっと引き寄せた。たぶん、今だけは俺一人のもんにしたくなったんだ。
 そうしたら反射かってくらいの勢いで、逆側から引き寄せ返された。
 頭の中で「はあ?」って言いながら小鹿の頭越しに龍治を見る。
 そこには俺と同じ、虚を突かれた顔があった。
 完全に、お互いに無意識の行動だったんだってわかった。
 ……けど今度は、俺も龍治も謝らなかった。


 すわった目ぇしやがって。両方の眼球に指突き刺すぞ。


 と思ったけど、俺も今は同じ目で龍治を見てんだろうな。
 ああ、マジで、イライラする……。

 ――それから俺たちは無言で映画を見た。たぶん十分くらい。それが限界だった。

「……なあ、小鹿。俺たち久しぶりに殴りあいの喧嘩しちまいそうだから、苛々を解消させる手伝いしてくんねぇか?」
「え!? そんな大喧嘩の要素あった?」


 ぎょっとする小鹿の反対側からは、俺に同意する声があがる。


「うん。俺からもお願い」
「な、殴りあいはダメだよ? 怪我しちゃう。私でよければ何でも協力するから、落ちつこう? ね?」

「だってよ、龍治。なんでもしてくれるらしいから、甘えさせてもらおうぜ」

 その後『甘えさせてもらった』俺たちは、二本挿しをしながら事細かにレポートを交わしあった。俺が「ここはこういう味がする」って言えば、龍治が「ここはこんな匂いがする」って感じで、まさしく互いの足りない感覚を補いあった。
 クソ映画鑑賞よりよっぽど有意義な時間に、俺たちは心の底から満足した。
 けどサンドイッチの真ん中にされた小鹿は、口を尖らせてプルプルしていた。自分の体を詳細にレポートされたのが、よっぽど恥ずかしかったらしい。
 小鹿の背の刺青が、羞恥心で真っ赤になってる。勇ましい虎と龍が酔っぱらったみてぇだ。


「はは。買いに行かせるまでもなかったな」

 ――最高の美酒は、ここにあったんだから。

​<了>

 

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【2000DL記念SS】

※エンド後のネタバレがあります。未試聴の方はご注意ください。

息子視点SS

『猛獣使い』 著・雪華

 綺麗に剪定された松の木が、無駄にでかい門の上に顔を出している。
 その松越しに天を仰いだ俺は、今の気分に似合いの哀愁漂う夕空に悪態をついた。

「あー、だりぃ」

 門をくぐって白い玉砂利を一つ蹴飛ばす。
 砂利は運悪く池に落ちて、驚かされた錦鯉が何すんだと言わんばかりに跳ねた。

 その水音にも苛つく。家の中に池があっても無駄じゃね?
 大体、俺は日本家屋はそんなに好きじゃないんだよ。

 この家は親父が表の仕事ででかい利益をあげたとかで、本家から与えられた『ご褒美』らしい。
 でも俺は、この「いかにもその筋の者」ですって醸し出す雰囲気が嫌だ。

 重い気分で広い玄関に入ると、親父たちの護衛の浅見が丁度玄関にいた。「お帰りなさいませ、徹治坊ちゃま」と迎えられて、俺はもっと眉間に皴を寄せる。
 坊ちゃまなんて柄じゃねぇ。

「なあ、浅見。母さんたちから帰ったら話があるって言われたんだけど、今どこにいる?」
「皆様、奥様のお部屋にいらっしゃいますよ」
「わかった」

 溜息をつきながら浅見に荷物を押しつける。
 中学に入ってから重くなった鞄は、俺の憂鬱さを表して歪んだ。

 ほんとは180度回転して遊びに出かけたい。
 けど今逃亡して後で文句を言われるほうが、もっと面倒だ。
 遊ぶなら何の憂いもなく楽しみたいっつーのが、俺のモットーだからな。

 仕方なく、磨かれた板張りの廊下を突き進む。
 幾度か角を曲がって、一番日当たりの良い部屋の前についた俺は、軽く息を吸ってから襖の向こうに声をかけた。

「ただいま」
「おう、やっと帰ってきたのか」
「遅いじゃん。寄り道してたっしょ」

 返された男たちの声にげんなりする。

 あー、やっぱ二人とも揃ってんのか。
 この二人が揃ってると話がややこしくなるんだよなぁ。

 俺が長い溜息をつくと、それに応えるみたいなタイミングで柔らかな声が響いた。

「お帰りなさい。入っていいわよ」

 だるい気持ちを飲みこんで襖を開ける。
 真っ先に目に入ったのは、今の憂鬱さを一番和らげてくれる母さんの姿だった。若干のグラデーションがかかった朱色の着物がよく似合ってる。少し乱れたように見えるのは、たぶん両側に座ってる猛獣どものせいだろう。

「平日の夕方なのに、なんで親父たち二人とも揃ってるんだよ」

「親父たち」なんておかしな表現だろうが、我が家ではこれが普通。
 あまりにも親父たちが、さも当たり前ですって顔で過ごしてるから、五歳くらいまでは「日本では重婚が許されてるんだ」とガチで信じてたくらいだ。実際、そんなわけなかったんだけどな。

 つーかツッコミそびれたんだけどよ、なんで今親父たちは半裸なんだ?
 俺のこと待ってたわりには、母さんとヤル気満々すぎだろ。

 俺がじと目を向けると、虎徹は背中の虎を跳ねさせるみたいにして笑った。
 龍治も体に刻まれた迫力満点の龍をうねらせ、くつくつと笑う。
 こんな男どもを両側に従えてる母さんは、さながら猛獣使いといったところだ。
 聞いた話じゃ組のもんにも、そう影で呼ばれてるらしい。

「龍治はともかく、虎徹は一応社長だろ。社長ってのは案外暇なんだな」
「暇なわけねぇだろ。可愛い我が子に問題が起こったっつーから、わざわざ早く切りあげてきてやったんだよ」
「単に母さんとイチャつきたいだけだろ」

 俺の指摘に、虎徹は悪びれなく肩をひょいと竦める。
 やっぱり仕事から逃げる口上だったんじゃねぇか。俺のことは二の次だろ。

 

 お前はどうなんだと龍治を見れやれば、優しげに微笑まれた。

「俺はちゃんと、徹治のこと考えてるよ」
「半裸で言われても説得力皆無」
「ほんとだって。ここで待ってればお説教ついでにイチャイチャもできて一石二鳥じゃん? って思っただけ」
「やっぱヤろうとしてたのかよ。説教するかヤルか、どっちかにしろよな」

 はぁ、そうなんだよ。俺は説教されることをした。
 ま、全然反省なんてしてないんだけどな。

 そんな気持ちを全面に出して軽く息を吐いたら、母さんが静かな、でもよく通る声で「そこに座りなさい」と言った。
 その静謐で威厳のある佇まいは、もう何十年も極妻やってますって感じで堂に入ってる。けど元は、なんとこの道と全く関係のないカタギの人間だったらしい。マジ信じらんねぇ。

 しみじみそんなことを思いながら、母さんの前に正座した。
 ちなみに説教くらう時に正座以外だと、虎徹の拳骨が頭に落ちてくる。

「ねえ、徹治。どうして呼ばれたのか、わかっているのでしょう?」
「あー、悪ガキどもをひん剥いて木に吊るしたから?」
「その子たちは大そう怯えて、トラウマになっているらしいわよ。私、言ったわよね? カタギの者には手を出さないようにと」
「ああ。けど、俺は謝らねぇぞ」
「ええ、そうでしょうね」

 ふくれっ面を作っていた俺は、意外な相槌に虚をつかれた。
 口を開けたままの間抜けな顔で、母さんの次の言葉を待つ。

「貴方は理由もなく約束を破る愚か者ではない。だから、釈明を聞くために呼んだのよ」
「えっとー……」

 その釈明ってのが、俺を憂鬱にさせてる一番の問題なんだ。
 正確に言うと、理由を語ることで親父どもが荒れ狂うのがわかってるから、面倒くさい。
 ぼりぼり頭をかいて視線を落とす。
 けど、こんなのは無駄な時間稼ぎだっていうのも、わかってる。
 虎と龍に凝視されてるのを感じて、俺はもうどうにでもなれって気分で一息に白状した。

「姫子にフラれた野郎どもが、イタズラって形で姫子に報復したんだろうな。服を脱がそうとしてたんだ。それを俺が発見して、逆に野郎どもを裸にしてやった。んで、木に吊るした。でもわざわざ人目につくところに吊るしてやったんだから、十分優しいだろ」

 姫子ってのは、俺の三つ下の妹だ。身内の欲目を除いても絶世の美少女。整った顔立ちにあわせ、色素の薄い髪と目が浮世離れしてて、天使みたいだとか言われてる。顔の作りとか色から言って、ほぼ間違いなく種は龍治だろうな。
 んで、俺は若い頃の虎徹そっくりらしいから、血筋で言うなら俺の実父は虎徹だ。
 兄妹でうまく分かれたもんだよな。

「あ? 姫子が凌辱されそうになってた?」

 俺の説明を聞いた虎徹の眉間に青筋が浮かぶ。ビキビキッていう擬音がぴったりだ。仁王像も泣いて逃げ出す顔してる。
 ちらりと龍治のほうを見たら、なぜかナイフの手入れをしてた。

 おい、早すぎるだろ。何を刺す気だ。龍治の頭は瞬間湯沸かし器か。

 俺はサイコキラーの爆誕を防ぐべく、全力で否定した。

「待て待て。小学生のガキどもが女を凌辱するわけねぇだろ」

 というか、それを虎徹が言うなってツッコミたい。
 男連中の酒の席で聞いた話じゃ、虎徹と龍治も若い頃は散々やらかしたらしいじゃねぇか。
 あん時は「まさか母さんとも……」なんて考えそうになって、眩暈がした。

「あいつらは、ただフラれた腹いせにイタズラしてただけだ」
「この家のもんに手を出したんだ。覚悟してんだろ」

「いやいや。ほら、あの年頃のガキは親の稼業がどうとかあんま考えてないっつーか、恐いもの知らずだからさ」
「丁度いいじゃねぇか。この機に考えられるようにしてやろうぜ」

 あー、これだから親父たちに説明すんのは面倒だったんだよなぁ。「実は脱がされそうになってたんじゃなくてパン一にされてたんだ」なんて正直に話したら、ガキどもを殴り殺しに行くだろ。
 それを回避するために、俺がわかりやすい『お仕置き』しておいてやったんだから、ちょっとは考えろと言ってやりたい。

「はぁ……」

 まったく、可愛すぎる妹を持つ兄貴は大変だ。
 しかも姫子が男どもを振る時の常套句が「お兄ちゃんよりカッコよくて喧嘩が強い人じゃないと嫌」だから、俺はチビガキどもにすげぇ恨まれてるんだぞ。
 まあ、なんだ、悪い気はしねぇけど。
 なんだかんだ言って、俺も姫子が可愛くてしょうがねぇんだ。
 だけど天使って褒め方は言い過ぎ。せいぜい「可愛い妹、世界選手権」があったら一位になるくらいだ。
 そう真面目に言ったら、なんでかダチたちに遠い目をされた。
 姫子が可愛いのはこの世の真理なのに、おかしな野郎どもだ。

「とにかく落ちつけよ、二人とも。俺がトラウマが残るくらいきつーいお仕置きをしてやったんだから、十分だろ」

 俺が軽くいなそうとしたら、龍治が笑みを深めた。
 でも目の中が全然笑ってないところがマジ恐い。

「姫子の肌を見たんだよ? 目ん玉くり抜いて二度と姫子を見られないようにしないと、俺は不安だなぁ。きっと天使のようなあの子を見たら、また悪いことを考えちゃうよ」
「おいおい、龍治。さすがに『くり抜く』のはやりすぎだ。失明くらいにしておいてやろうぜ」

 どっちもやりすぎだっつーの。相手はカタギのガキだぞ。
 さすが、かつては狂犬と呼ばれてた男たちだけあって、この道の暗黙のルールすらちょいちょい破りそうになるから、困ったもんだ。

 親がこの調子だから、息子の俺が比較的まともに育ったのかもな。
 ほら、なんつーの。反面教師的な。

「虎徹ー、俺は納得いかないなぁ。目が駄目なら今すぐ汚らわしい手を切り落としに行きたいよ」
「今すぐはやめろよ。実行するなら夜だろ」

 やいのやいの盛りあがってる親父たちの会話をBGMに、庭の花を見る。
 傷心の姫子に後で持っていってやろうとか考えてたら、凛とした声が響いた。

「虎徹、龍治、一旦黙ってくれないかしら」

 その一言で虎徹も龍治も、まだまだ言い足りなさそうな顔をしながらも口を閉じた。

 やっぱ俺の母さん、この家で最強だよな。
 おっとりとした性格と笑顔が印象的な人だけど、猛獣二匹の手綱を握れるのは、母さんしかいないと思う。

「理由はわかったわ。姫子を守ってくれて有難う、徹治」

 ふわりとした笑顔で労われて緊張が解ける。
 もう母さんに任せておけば大丈夫って気がした。

「じゃ、お咎めなし?」
「いいえ。約束を破ったことには変わりはないのだから、罰として夕飯までにお庭の掃除よ」
「えー。遊びに行く約束してたんだけど」
「明日にしてもらいなさい」
「はいはい、わかったよ」
「『はい』は、一回ね」
「はーい」

 俺の家は分家なのもあって、そこまで教育に厳しくない。
 それでも人として最低限のことを身につけさせようとするのは、たぶん母さんが元カタギの人間だからこそなんだろな。母さんは人としてしっかりしてて、芯のある優しさを持ってるんだ。だから皆から尊敬されてるし、慕われてる。
 嫁に入ったばっかの時は、親父たちが「俺たち二人の嫁だから」なんて言ったことで奇異の目で見られてたっつーか、ドン引きされてたらしいけど……今ではそれすら受け入れられてる。
 たぶん、みんなもわかったんだ。この三人は、まさしく三人で一組の夫婦で、互いを補いあってるんだって。

 この家族構成が異様だっていうのはわかってても、三人を見てると妙に納得しちまうんだよな。三人で並んだ時に醸し出す雰囲気が、すげぇ特殊だから。

「じゃ、掃除してくる。親父たちは、あんまり母さんに無理させんなよ。夕飯一緒に食えなくなるからさ」

 虎徹に向かってビシッと指をさす。
 注意された虎徹はくつくつと笑って口角をあげた。

「何年夫婦やってっと思ってんだよ。加減はわかってる」
「そう言って、この間足腰立たないようにしたじゃんか。なあ、龍治も憶えてるだろ?」

 暗に「お前が止めないからだぞ」と言ってやれば、まったく反省の色がないニッコリ笑顔を返された。ムカつく。

 あーあー、親たちが仲良すぎるっていうのも考えもんだよなぁ。ついで言うと、息子に「性教育」と称したアレやコレの際どい情報を与えてくるのも止めてほしい。
 虎徹と龍治のせいで、俺は童貞なのに性知識がやたらと豊富になっちまった。
 逆に実践する気が失せる。

「ほどほどにしろよな」

 胡乱な目になった俺は、深い深い溜息をついて部屋を出た。

 

「はー。やっぱ、だりー」

 って言いつつ、虎徹のお仕置きが嫌で庭掃除を始める。
 しばらく無言で落ち葉を集めてたら、とととって感じの軽い足音が聞こえてきた。

「お帰りなさい、お兄ちゃん!」

 可愛らしい印象の足音に反して、強烈なタックル――全力のハグを受ける。
 空手で鍛えた体で踏みとどまった俺は、よしよしと小さな頭を撫でた。

「なんだ、まだ部屋の奥でぐすぐす泣いてるのかと思ってたのに」
「私だって成長するのよ。それで、龍治は大丈夫だった?」
「ああ、母さんが上手く宥められそう」

 姫子はふわふわとした雰囲気のわりに、人をよく見てる。
 怒らせたらヤバいのは、実は恐そうな虎徹じゃなくて、優しそうな龍治のほうなんだっていうのを本能的にわかってる。
 龍治はすげぇ気をつけて姫子には危ない顔を見せないようにしてるっていうのに、女はそういうところ、鋭いよな。

「良かった。私の服を脱がしたくらいで彼らが全盲になったら可哀そうだもの」
「姫子も強くなったなぁ」
「なってないよ。最強のお兄ちゃんが守ってくれるから、強気でいられるだけ」
「それは強さと違うのか?」
「うん、本物じゃない。私は仮初じゃない、本当の強さを身につけたいの。それで、いつか私がお兄ちゃんを守るのよ」
「はは、姫子はそのままでいい。嫁に行くまでは、守らせてくれよ」
「それじゃあ私、一生守ってもらうことになっちゃうよ。お兄ちゃんよりカッコよくて強い人なんていないもん」
「まあな。俺を倒せるやつが、姫子の男になる条件だからな」

 他愛のない話をしている間に、うっすらとアレの真っ最中の声が聞こえてくる。
 俺はさりげなく姫子の耳を塞ぎながら池の前に移動して、二人で鯉に餌をやった。

 まったく、理解ある息子に感謝しろよな。
 ついでに、三人目はキャッチボールができる弟にしろ。
 
 ――っていう願いが、一年後に叶った。

​<了>

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